TMS(津川数学セミナー)

岩永 大樹 君(灘高校卒)京都大学理学部特色入試合格

僕は京都大学理学部の特色入試(数理科学)に合格することができました。 高3になるまでは大学受験というものを全く意識せず、学校では友達と遊んだり、部活動(数学研究部・物理研究部)で楽しんでいました。しかし高3になると、志望校を決めねばならず……当初は東大に行こうかとぼんやり考えていましたが、コロナ禍で修学旅行が中止になるほどの感染者数増加で規制が多くなり不自由な状況になりました。僕は大学でも数学を学び続けたいと考えていました。すると、津川先生は僕に、「特色入試」という制度があるのでチャレンジしてはどうかと言ってくれました。特色入試の選考過程は、まず学校から推薦をもらい、1次は書類選考、2次は筆記試験(数学の大問4つを制限時間4時間で解答し、その日の夜に選考結果が発表される)と通過者は翌日の口頭試問を受けます。その2次試験を合格した者は、共通テストで規定の点数以上を取ると最終合格になります。特色入試の口頭試問は、他の大学で行われる総合型選抜試験と異なり、数学に特化した内容で、前日に解いた問題についての質問がメインです。一般入試とは全く異なる、数学では日本一と言われるほど難しい京大独自の試験だそうです。他の灘校同級生と違って僕は数オリなどで華々しい成績を残したことは一度もなく、自分に特色と言えるものがあるのか、と初めは思いました。しかし、京大が募っているのは数学が好きな人、難問にじっくり取り組むことのできる人だと知り、チャンスはあるかもとダメ元で挑むことにしました。僕の「特色」ですが、高2の終わりにたまたま友達がやっていた言語学オリンピックを軽い気持ちで受けてみたところ、何と銀賞が取れてしまい、更にアジア太平洋大会にも出場できたことが書けるとわかり(!)、学校推薦をもらえました。特色入試に関する参考資料が極端に少なく、情報がないことが不安だったので僕の出願から合格までの一連をまとめることにしました。提出書類(学びの報告書)作成は僕にとって今回の試験で一番大変な作業でした。津川先生や学校の担任にアドバイスをいただきながら、自分の志望動機を明確にし、手書き(パソコン使用不可)で作成してゆきます。もちろん内容は自由に考えて書くのですが、僕の場合、好きな分野や興味のある数学の定理、今後やってみたいと思う研究の内容や数学への思いなどを書きました。先生に相談しながら何度か手直しをし、また書き損じると当然最初からやり直しなので、とても苦労して作り上げました。また、先生方には僕の解いた過去問の添削もしてもらいました。津川先生にはきめ細やかな添削をしていただき、特色入試の問題には解析学の考え方が出るかもしれないということや、他大学の良い過去問なども教えていただきました。更に、学校の先生にも、面接の練習をしていただきました。そして迎えた筆記試験当日。空調は適度に設定され、水分をとるのも許されます。体調は万全でした。ところが、本番の入試では思った以上に問題が解けませんでした。帰る途上で問題の解法が今更思い浮かんで、自分のミスが判明してゆき、チャレンジとはいえ、とても不安でした。ドキドキのオンライン発表で筆記試験合格を知ったときは正直びっくりしました。翌日の準備として、解けなかった、または間違えた問題を可能な限り考え抜きました。面接のぎりぎりまで、自宅の大阪から京都までの電車内でもずっと考え続けました。大問4つのうち3つは面接で問われても答える自信が出てきたので、少し安心しました。制服の高校生も数多くいましたが、うちは制服がないので、僕はポロシャツにVネックのセーターと黒いズボンでした。11月の京都は早朝だと冷えます。待ち時間もあるので防寒着も必要です。面接では、まず控室で待たされます。呼ばれると、面接室に入ります。面接室に入ると、自分の座る椅子の前に筆記試験の問題の置かれた机、そしてその向こう側に教授方が5、6人座っています。自分の後ろは黒板でした。僕の場合は、まず受験番号を聞かれ、そして志望理由を質問されました。学びの報告書に書いたことに沿って答えました。次の質問からは全て、前日の問題に関することでした。どの問題ができたか、昨日解けなかったものはどれくらいその後解いてきたか、解説を後ろの黒板でしてください、と言われました。僕は自分の答えに自信を持って、少し冗長でも大体正しい回答ができたと思っています。面接は10~15分で終わりました。少々あっけなく感じました。結果が出るまでの2週間は気が気でなかったです。そして2週間後、2次選考のオンライン発表、「合格」でした。津川先生にはすぐに報告しました。先生はもう冬期講習には来なくても良いと言ってくれましたが、最終合格がもらえるまでが不安で、何より授業に行きたかったので冬期講座には出席しました。後日共通テストを受験し、その1ヵ月後、ようやく最終合否発表で合格をいただきました。出願倍率が何倍であっても、自分が解ければ倍率は関係ない、という津川先生のアドバイスに奮起することができました。また、先生との出会いがなければ、僕は特色入試の存在も知らず、全く別の学校を選んでいたかもしれません。自分の好きな道を進む一歩を与えてくださり、また、5年間毎回楽しい授業をしてくださって、本当にありがとうございました。